表郷小学校

表郷の文化財

 ビャッコイは、県指定の天然記念物ですが、表郷地区には、「数多くある~文化財・・・」と校歌でも歌われているように、たくさんの文化財が存在します。その中でも、私が一番に選ぶとしたら、やはり、「常在院の絵巻物」でしょうか。

 常在院は、表郷中寺にあるお寺です。このお寺に、ある有名な妖怪伝説にまつわる絵巻物があるのです。その妖怪とは、「九尾の狐」です。
 この九尾の狐は、平安時代に、京の都に現れた妖怪です。狐は化けるのがうまいので、玉藻前(たまものまえ)という絶世の美女に化け、当時の天皇を呪い殺そうとしました。しかし、その正体を陰陽師に見抜かれた九尾の狐は、今の栃木県の那須原に逃げました。京より追ってきた討伐軍は、苦戦しながらも、ついに九尾の狐を討ち取ります。しかし、死んだはずの九尾の狐の魂が、大きな岩に乗りうつり、毒石となって周囲に毒気を吹き出し、近づく人や動物の命を奪いました。那須野に住む人々は、この毒石を「殺生石」と名付け、近づくことを避けていました。
 それから何年も経ち、何人もの僧侶がここを訪れては、殺生石の呪いを鎮めようとしました。しかし、みな、命を奪われました。ある時、一人の高僧が、この殺生石の呪いを鎮めようと、那須野に来ました。この高僧は、玄翁(げんのう)和尚と言いました。玄翁和尚は、大変強い念力で、ついに殺生石の呪いを鎮め、その時、殺生石は砕け散り、そのかけらは日本全国に飛び散ったのでした。

 この物語が、絵巻物となり、常在院に残っているのです。それがなぜかというと、殺生石の呪いを鎮めた玄翁和尚が、この常在院を建てたからです。さらに、全国に飛び散ったという殺生石のかけらの一つが、常在院の裏山にも飛んできて、今も残っているのです。もうすごすぎです。そして、もう一つ。玄翁和尚の強い念力で、殺生石が砕け散ったという伝説から、石などをたたき割る「かなづち」を「げんのう」と名付けられました。

 常在院の絵巻物の正式の名前は、「紙本著色源翁和尚行状縁起(しほんちゃくしょくげんのうおしょうぎょうじょうえんぎ)」と言います。幅約30cmで、長さが約15mほどの絵巻が3本あります。この絵巻は、年に1日だけ、8月7日に御開帳します。興味がある人は、常在院を訪れてみてはいかがでしょうか。とてもきれいに彩色された素敵な絵巻物です。